書評・感想ブログ。
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ランチのアッコちゃん / 柚木麻子 (双葉社)
お昼休みが苦手だった。小学生のときから社会人になるまでずうっと。ご飯を食べたい気分でないのに無理やり何かを食べさせられる給食。「眠いーやるきしなーい」と言っているだけの高校生の昼休み。私生活をまったく知らない人々と過ごすアルバイト先での昼休み。寝るのも読書も許されている気がしなくて、休んでいるのかなんなのかわからない時間が昼休みだった。そんな昼休みの経験しかないわたしにはランチは愉快な気がしなく、本書の「ランチのアッコちゃん」というタイトルのもつ女子力アピールのようなものが怖かった。でも、表紙のお弁当がおいしそうだった。負けた。

ランチタイムの女王アッコさんは、昼休みにも休まない。身体を鍛え、様々な場所に出没しては人脈を広げ、常日頃向上心を絶やさない。そんなアッコさんと契約社員女子がランチタイムを入れ替え、「新しい私」と出会う短編集。
このままずるずるとアッコさんの凄さだけが語られるお話だったら疲れるなあと思っていたら、3話で語り部ががらりと変わり、「ご飯」を通して人間が描かれるお話になった。とても面白い。のだけれど、アッコさん(というか東京ポトフ)の登場が遠すぎたり、唐突過ぎたりして、「アッコさんの活躍に期待しないで読む方が面白かったー」というのが正直な感想。
コギャル時代を懐かしんでいるアラサー女子と風紀に厳しい教師のやりとりが面白くて好きだった。つい先日、高校時代の恩師とお酒を飲み、まったく同じようなことを言われたのを思い出す。
4話めのゆとり世代の起業もおもしろい。このお話を読み終えてから、本書のカバーに書かれていた「ビタミン小説」の意味をなんとなく理解する。うまくいえないけれど、無謀なことにもがんがんチャレンジしてみたくなる気分だ。

ランチではないけれど、おうちで食べるご飯をもっとちゃんと味わいたいなと思ったのであった。おうちで食べるお昼ごはんほどそっけないものはない気がしてきて、改めたい気分。


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夜は短し歩けよ乙女 / 森見登美彦 (角川書店)

薄汚い青春の最中に立ちすくむ大学生が、じつは世界で一番清らかであるという真実はつねに無視される。


森見作品を読むようになってから、男子学生がかわいい存在に思えるようになった。
本書もくすぶる男子大学生が妄想と現実を行き来しながら、黒髪の乙女に恋するお話である。とにかく、この黒髪の乙女が魅力的な女性なのである。現実にいれば不思議ちゃんの部類なのだろうが、フィクションの世界では素敵なのである。
わたしが好きな乙女のシーンは文化祭でのワンシーンだ。鯉のぬいぐるみを担ぎ、像の尻を撫でる乙女。
この文化祭のお話はごたごたとしていてとても文化祭らしくて好きだ。韋駄天コタツにゲリラ演劇。憧れの大学生活といえば、佐々木倫子さんの漫画『動物のお医者さん』だったが、森見作品の大学生活もとてもいい。(休学していたり自棄になっていたりと苦しそうではあるが)
大学には何をしに通うのだろうな、と時々思う。すぐに「何のために」と考えてしまうのはよくないと思うのだけれど、考えてしまう。そして、自分の子供に何のために大学へ行って欲しいかなと考える。
本書を読んでひとつ答えが浮かんだ。どうでもいいことに一生懸命取り組む時間にしてほしい。バカみたいに何かに夢中になってほしい。社会人になれば、どうでもいいことを一生懸命する時間はない。たとえあったとしても空しさが募るはずだ。なので、本書の主人公は素敵だ。乙女のために、火鍋を食べたり、屋上から落ちたりする。大人になったらできないことの数々。いいなあ。今、学生である方々にはおおいに無駄な時間を楽しんでほしい。読書をしたり、映画をみたり、空想にふけったり、なんでもいいと思う。勉強するのもとてもいいと思うけど、学生時代って驚くほど勉強が楽しくないのは、なんでだろう。

この作品は、大学生の恋愛を描いたものなのだが、おおいにファンタジーである。読む人を選ぶのはそのためなのかもしれない。最終章では、町中が風邪の病に侵され、乙女がお見舞いに奔走する。渦巻く鯉、舞う乙女のラストシーンが素敵で、ぜひ映像で見てみたい。詭弁踊りも併せて見てみたい。

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伊藤くんAtoE / 柚木麻子 (幻冬舎)
歳を増すごとに、友人知人の恋愛トークが重いものになりつつある。困る。なにもアドバイスできないので、ワイドショーを見るがごとく頷くに徹する。本当にそんなマンガみたいなやりとりがあるんですね、と羨ましくなったり、圏外の話でよかったと思ったりする。

本書の伊藤くんAの女性であったり、伊藤くんDの女性であったり、とにかく読んでいて、ちらほらと自分や友人知人の顔が浮かぶ。「うわあ、これ読んだらいけない小説だったかもしれない。伊藤くん、最後には改心してくれないかな。でないと救われない」と思ったんだけれども、伊藤くんは一環してだめなヤツであった。読み終えても、伊藤くんのだめっぷりに疲弊させられた。読者をも振り回す伊藤くん。全国の伊藤さん連呼してごめんなさい。
だめ男の美青年伊藤くんとそんな彼に振り回されてしまった女たちの連作短編小説である。
だめな男ほど女を欠かさない気がする。ひとりで生きていけないからだ。そして、女はだめな男を世話する自分が好きだったりする。欠点を見つけては、それを許す寛大な女である演技をし、自分をなぐさめているような気がしてならない。

わたしがすきなのは「伊藤くんC」のお話である。この子が唯一、伊藤くんにダメージを与えられたような気がするからだと思う。端的に言えば、伊藤くんを挟んだヤリマン(聡子)と処女(実希)の友情関係が面白かった。互いに互いが見下しあいはじめ、友情が決壊する。
彼氏ができた途端に人格が変わる女の子は多々いる。あれってなんなのだろう。趣味も服装も変わる。女として見られることを覚えるという感じなのだろうか。男の子でも恋人の有無でがらっと感じが変わるのだろうか。気になるところ。
「伊藤くんD」の主人公でもある実希の豹変ぶりにはひくものがある。伊藤に捨てられたくがないために処女を捨てようと必死になり、なりふりかまわず猛進する。「こういう子、いるいる」となってしまい、本作は心がどっと疲れる。「彼女らとは違う、わたしはこんな男には振り回されない」という優越感が自分にはあるのだなあと目の当たりにしてしまう。
 

結局、何も発さない人間がこの世界で一番強いのだ。


ここまで伊藤くんを見下して読んできた伊藤くんAtoDなのですが、最後のEの伊藤くんの主張で、わたしは嫌な予感が的中してしまった。「わたし、けっこう、伊藤くんの言うことが理解できてしまうよ?」
こまごまとした伊藤くんのあれこれは理解できなかったりするのだけれど、「傷つけられない生き方」に関しては、とても納得してしまった。
それを「死んでいる」と言われてしまったので、そんなにダメかなあとも思う。いちいち傷ついてたら心がもたないから、大一番以外は土俵にあがらない、という生き方は間違っているのかな。間違ってても、今から何もかも全力で!生きます!ってのもなんだか疲れるよなあと思うのであった。

とにかく読み終わってからどっと疲れる作品集で伊藤くん本当すごい。

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スロウハイツの神様 / 辻村深月 (講談社)

この子を、僕の文章が笑わせた。


学生時代、わたしの神様はMDウォークマンだった。ひとりになりたい時、その空間から姿を消したい時、音楽は瞬時に外界からわたしを切り離してくれた。そんな音楽を作ってくれていた人たちを神様だと思っていた。何かにすがりたい気持ちでいっぱいで、強がっていた学生時代を思い出して、必要以上に本書のキャラクター達に感情移入してしまった。
この神様について、とても多くを語りたいのだけれど、うまく語れない。どこをかいつまんでいいのかわからない。本書の中で、ケーキを手に入れた環がケーキを譲ってくれた店員に「自分の中にあるストーリーを知って欲しい」と語り尽くせない思いについて語るシーンがあるけれど、まさにそれと同じだ。その感情を持て余しているので、ブログを書いているといっても過言ではない。
作中でチヨダコーキが「この子、僕の文章が笑わせた」と語る所がある。わたしは本を出版したことはないけれど、ほんとうにこの一文に尽きるのではないかな、と思った。人生は簡単に変えられないけれど、日常を忘れさせて、物語の世界の中へいざなう。それだけのために、きっとクリエイターたちはものを生み出し続けているんだろうな。
そう思ったら、自信を持ってわたしは作品を受動し続けよう!と思うので、不思議。
 

存在感のある光の前には常に影が生まれる


この本を読もうと思ったのは、ほかにも理由がある。
読み返していた「黒子のバスケ」の主人公である黒子テツヤが読んでいたのである。(何巻か忘れちゃったけど)古典文学ならまだしも現代文学をわざわざ読ませる意図とは?と気になったのだ。
比較しなくてもわかるんだけれど、共通項が多くて驚く。
「存在感のある光の前には常に影が生まれる。その影が濃く、その闇が深ければ深いほど、光の明るさはより際立つ。」
この文章が一番ダイレクトに光と影について語っているのかな、と思うけれど、作中のカガミ姓の子をからかうために鏡を使った光を使ったいじめをするというエピソードを読むと、もう一声、黒バスの方にえぐいものを期待してしまう自分もいる。
黒バスのファンの方に読んで欲しいし、読んだら感想を書いて欲しいな、たくさん!と思っている。
 

いつか終わりが来て、それが来ない場合には、きっと形が変容していく


こういう何人かの人物が集まっているお話を読んでいると、自分も仲間に入っている気分で読んでしまうので、中盤からの「いつまでもみんなと一緒にはいられないね」という歯車が狂いだす瞬間がつらい。本書でも、とてもうまくいっている風だった正義とスーのカップルが破局するあたりから大きな転換が見え始め、わたしは無駄に動揺した。恋人の髪の毛を切るスーの設定が好きで、それを良しとしていた正義もすきで、ああ二人に幸あれと今も思っている。

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魔法飛行 / 川上未映子 (中央公論新社)
評価:
川上 未映子
中央公論新社

なんだって継続にしか意味がなかったりするからね。


川上未映子さんのエッセイである。
本を読むとき、気に入った文章に付箋を貼っていきながら読んでいるのだけど、この「魔法飛行」を読んでいる時に付箋が足りない事態に陥り、ノートに書き写しながら読んだ。中学生の頃、好きな歌の詞をひたすら書いていたことを思い出し、自分の意思の詰まっていない言葉をひたすら書くっていうのも悪くないねと思うのだった。
エッセイといっても、日記風のものでもないし、唐突に詞がはいったりする。ページもまちまちで、何かのテーマに沿って書かれたんだなという印象もなく、本当に素のそのもののテンションが見え隠れしているのも(オタク的な)胸を熱くさせる。
 

子どもの胸とあたまのなかで分解されていた言葉を思うと夏という気がとてもする。


夏に対して、未映子さんが「子どもそのもの」と書いていて、ああ本当だなあと思う。小学校1年生の夏休みから、わたしの記憶の夏はくっきりとしはじめ、19歳の夏休みでそれが消えた。漠然とあとは「暑いなあ」「花火だなあ」「秋の匂いがし始めたよ」の繰り返しで、夏の形があまりない。夏は子どもの季節なのだ。いやいや行っていたラジオ体操が恋しくなるし、プールとか蝉の鳴き声とか足についたござの痕。子どもの頃に経験していないと懐かしくも思わないわけで、わたしは自分の子どもらにそれらを数年かけて経験させてやらないといけないな、と思う。
この「子どもの胸とあたまのなかで分解されていた言葉」というのが、わたしにもひとつある。
「正露丸糖衣A」だ。CMで聞く限り、「正露丸とイエーイ!」だと思っていた。元気になる薬なんだなあと子ども心に思い、大人になってから、腹痛で正露丸の薬瓶をまじまじと見つめて、その間違いに気がついた。冷静に考えればありえないネーミングだというのに、子どもの頭はそれをよしとしてしまう。腹痛を忘れるほど笑った。でもその場にいる家族には言えなかった。

エッセイを読んでいると、忘れてしまっているわりとどうでもいい生活の断片を思い出す。それが好き。


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