書評・感想ブログ。
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伊藤くんAtoE / 柚木麻子 (幻冬舎)
歳を増すごとに、友人知人の恋愛トークが重いものになりつつある。困る。なにもアドバイスできないので、ワイドショーを見るがごとく頷くに徹する。本当にそんなマンガみたいなやりとりがあるんですね、と羨ましくなったり、圏外の話でよかったと思ったりする。

本書の伊藤くんAの女性であったり、伊藤くんDの女性であったり、とにかく読んでいて、ちらほらと自分や友人知人の顔が浮かぶ。「うわあ、これ読んだらいけない小説だったかもしれない。伊藤くん、最後には改心してくれないかな。でないと救われない」と思ったんだけれども、伊藤くんは一環してだめなヤツであった。読み終えても、伊藤くんのだめっぷりに疲弊させられた。読者をも振り回す伊藤くん。全国の伊藤さん連呼してごめんなさい。
だめ男の美青年伊藤くんとそんな彼に振り回されてしまった女たちの連作短編小説である。
だめな男ほど女を欠かさない気がする。ひとりで生きていけないからだ。そして、女はだめな男を世話する自分が好きだったりする。欠点を見つけては、それを許す寛大な女である演技をし、自分をなぐさめているような気がしてならない。

わたしがすきなのは「伊藤くんC」のお話である。この子が唯一、伊藤くんにダメージを与えられたような気がするからだと思う。端的に言えば、伊藤くんを挟んだヤリマン(聡子)と処女(実希)の友情関係が面白かった。互いに互いが見下しあいはじめ、友情が決壊する。
彼氏ができた途端に人格が変わる女の子は多々いる。あれってなんなのだろう。趣味も服装も変わる。女として見られることを覚えるという感じなのだろうか。男の子でも恋人の有無でがらっと感じが変わるのだろうか。気になるところ。
「伊藤くんD」の主人公でもある実希の豹変ぶりにはひくものがある。伊藤に捨てられたくがないために処女を捨てようと必死になり、なりふりかまわず猛進する。「こういう子、いるいる」となってしまい、本作は心がどっと疲れる。「彼女らとは違う、わたしはこんな男には振り回されない」という優越感が自分にはあるのだなあと目の当たりにしてしまう。
 

結局、何も発さない人間がこの世界で一番強いのだ。


ここまで伊藤くんを見下して読んできた伊藤くんAtoDなのですが、最後のEの伊藤くんの主張で、わたしは嫌な予感が的中してしまった。「わたし、けっこう、伊藤くんの言うことが理解できてしまうよ?」
こまごまとした伊藤くんのあれこれは理解できなかったりするのだけれど、「傷つけられない生き方」に関しては、とても納得してしまった。
それを「死んでいる」と言われてしまったので、そんなにダメかなあとも思う。いちいち傷ついてたら心がもたないから、大一番以外は土俵にあがらない、という生き方は間違っているのかな。間違ってても、今から何もかも全力で!生きます!ってのもなんだか疲れるよなあと思うのであった。

とにかく読み終わってからどっと疲れる作品集で伊藤くん本当すごい。

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小説「伊藤くん A to E」を読みました。 著者は 柚木 麻子 伊藤くんをめぐるA〜Eの5人の女性を軸にした連作短編 なかなか面白い構成というか ストーリーはどの話も伊藤くんが好き女性だったり、伊藤くんのことが好きな女性だったりと 恋愛ストーリーなのだが そこで
伊藤くんと女性たち | 笑う社会人の生活 | 2015/08/27 21:51