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評価:
窪 美澄
新潮社
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第8回女による女のためのR-18文学賞、受賞作。
何度も言うが、女性が求める「エロ」と男性の求める「エロ」は違う。
その真髄をわかっている三浦しをんさんが第11回から選考委員になったようなので、
これからも期待大な文学賞です。
エロ小説とか性描写が読みたいわけではなく、
「好き」とか「通じ合う」とかそういう漫画的要素のある恋愛は少女漫画で飽食気味で、
結婚してから「恋人」というものに幻想をいだけなくなってしまった。
処女とか独身とか純愛とか、そういうものも心が痛くなって読むのが疲れる。
わたしは、もう、物語を楽しめないのか、と不倫文学しか楽しめないのか、と思っていた。
「ふがいない僕は空を見た」は、男子高校生とコスプレ主婦の不倫現場から始まる。
しょっぱなから濃い。
男子高校生斉藤の自宅は、助産院。毎夜、妊婦が陣痛に苦しむ。
妊婦の叫び声を聞きながら、コスプレ主婦の喘ぎ声を思い出す。
1冊を通して、
子どもを作るため、娯楽快楽のため、ストレス発散のため、、することは似たり寄ったりなセックスだけど、思いは多種多様。
そんなことをじっくり考えさせられた。
1話めの「ミクマリ」は、「コスプレをしてするセックス」と「そうでないセックス」で対比がされている。
2話め以降は、斉藤を取り巻く人物たちの「性」が描かれる。
妊娠できないコスプレ主婦、処女の松永、少年愛者と団地住まいの同級生、そして助産師の母。
すべてのお話が「R-18」というくくりになってしまうけれど、
そんなくくりになってしまったがために、読まれないのはひどく勿体無いと思う。
どのお話もすべての人にちょっとずつ共感ができて、苦しかった。
連作短編集は、勢いでガツガツ読んでしまうけれど、
この1冊は、どれもこれも、お話が重くって、1日1話が限界でした。
読み終わって、それぞれに想いを馳せてしまった。
良太が大学にいけますように……。
(232p)