書評・感想ブログ。
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八日目の蝉 / 角田 光代 (中央公論新社)
評価:
角田 光代
中央公論新社

昨年、NHKで放送していた「私の1冊 日本の100冊」という番組で、光浦靖子さんが紹介していて存在を知った本です。
中身については覚えていなかったんですが、光浦さんがテレビ越しに本書について熱弁していた姿が忘れられなくて、機会があったら読んでみよう、と思っていた作品です。


不倫相手の自宅に忍び込み、生後6ヶ月の赤ちゃんを誘拐してしまった希和子。
かつて自身が身ごもった時につけるはずだった「薫」という名をその赤ん坊に名付け、希和子の逃亡生活が始まる。
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。


読みながら、自分の赤ん坊が生後6ヶ月のいちばんかわいいであろう時に誘拐されることを想像し、希和子という人物そのものが許せなくて、どんだけ、薫のためにいい母になろうとしていても歩み寄ることができませんでした。
この女は、母性を履き違えている、と。
胎動や胃痛で眠れない時に読んだので、「これを味わってないのに、赤ちゃんのかわいい笑顔を独り占めするなんて……!」と憤ってしまいました。
ベビーベッドで幸せに眠っていた薫を無理やり連れ出し、立ち退きでもめている見知らぬ女の家に泊まりこみ、挙句の果てに宗教団体に身を隠す希和子。
薫が笑ってくれるだけで幸せ、わたしは薫のためにならなんでもする と希和子は何度も胸に誓う。それが母性。
だって、薫を幸せから引き剥がして逃亡生活の相棒にしたのは貴女じゃないか、とわたしはまだ怒りながら読んでいました。


2章では、大人になった薫の視点で描かれる。
幼少期を育てた犯罪者の女と突如現れた自分を産んだ女。
「あの事件」について、被害者でありながら、でも加害者のような家族の中で育った薫。
この2章がなければ、「なんか腹立つ小説だなー」という感じだったんですが、薫のその後の人生を読んでいて、「希和子は、母として機能していたんだな」ということを知り、なぜかホッとした。
薫が千草と小豆島に向かいながら、「腹の中の子に、自然をたくさん見せてやりたい」と希和子と同じことを胸に抱く部分で、胸が熱くなった。


生んだら、母になる。生まなくても、母になる。
女は、つねに母なんだろうなあ。きっと。なんやかんやで母なんだろうな。
……すると、男は永遠に子どもなんだろうか。

(346p) 
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装幀は坂川栄治・田中久子(坂川事務所)。装画は水上多摩江(題字共)。 「読売新聞」夕刊2005年11月21日から2006年7月24日...
八日目の蝉 角田光代 | 粋な提案 | 2010/03/30 00:58