書評・感想ブログ。
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怒り / 吉田修一 (中央公論社)

 原作を読む派か、原作を読まずに映画やアニメを観る派か、と問われれば「原作を読む派」である。漫画やアニメの実写化に反対意見の多い昨今であるが、「第三者がどうその世界を切り取るか」ということにのみ執着して観れば、そこそこにおもしろかったりする。それを楽しむためにも、原作を知っていないといけない。また、ある程度のネタバレはしてあった方が、作品が楽しめるということもある。原作は知っているであろうと踏まえた上での実写化なども多々あるので、気が抜けない。

 というわけで、本作も映画を劇場で観る前に原作を読むことにした。なにせ、予告編がおもしろそうだったのだ。原作がおもしろくないわけがない。

 

 本書は殺人事件の匂いのしない3人の人間と、その3人と何の因果か突然現れた正体不明の男(殺人事件の指名手配犯となんとなく似ている)との関わりが描かれている。

「犯人は!?誰なんだよー」とページを繰るのだが、めくってもめくっても、誰一人怪しくないし、全員怪しい。矛盾しているのだが、怪しいし、怪しいと思いたくないのだ。風俗店から逃げ出してきた漁港の愛子ちゃんの幸せを願いながらページをめくり、なにも信じられないでいるゲイの優馬が幸せに生活していけることを祈ったし、島の女子高生泉ちゃんが平穏無事に青春を終えることを願いながら読み進めていた。

「この中に、殺人犯がいるんだぞ?」とふと本来の目的を思い出したのは下巻に入ってからだ。みんな生活は一見、うまくいきそうに見えているのに、これから誰かの人生が転落してゆくのだなあ、と悲しくなった。殺人が起これば、被害者の人生は奪われることはもちろん、こうして犯人が逃げ、逃げた先で人間関係を築いていけば、その新たな人間たちもまた平穏が奪われてゆくのだ。

 「隣にいるこの男が犯人かも」と3人(および、その周囲の人間)が疑心暗鬼になり、苦悩する。「他人の空似であった」なんてオチだったらいいのになあと思うが、そんなことはないので、ご安心ください。
「でもさ、苦労した新聞配達少年が成長して遊び人になっちゃいけないって法はないよ。世間はほら、いつまでもそういう目で見るから、やっぱり不幸だった少年には不幸なままというか、実直で地道な人生を求めるだろうし、その方が傍目には感動的だろうけど、でも、そんなもんに付き合ってやる必要ないもんな」(上巻p.188)

 

 ドラマ『流星の絆』の「遺族が笑っちゃいけねーのかよ!」という次男の一言をいつまでも胸に残しているわたしらしい引用だった。感動を与えるとか、感動させてもらった、とかはたして感動とはなんなのか。わたしは「感動した」って言葉がそもそも大嫌いなのだ。

 ものすごく真剣に上下巻を一気に読んでしまって、読み終えてから貼ってある付箋がひとつしかなくて、「いや、もっとすごい会話とか文章とかあったはずなんだけど、もうちょっと話まるごと思い返したり、吉田さんのインタビュー記事読みたい」と思って、再読には至りませんでした。

 さて、映画はどんな風に物語が抽出されているのか楽しみです。

 

 

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怒り(上) [ 吉田修一 ]
怒り(下) [ 吉田修一 ]

 

 

ぼくは勉強ができない / 山田詠美 (文春文庫)
わたしは勉強ができない高校生だったので、この本のタイトルはよく覚えている。「こんなとっつきやすいタイトルをつけたって本は読まないからな」
おすすめの1冊などの出版社の小冊子に必ず入るこの小説。必携の1冊。わたしは中身を知らない。本を扱う仕事をする身としていかがなものか、と手にした。
ついに、時田秀美に出会ってしまったのだ。
 
空気は秋でも、影は夏。そういうことに気付くと、ぼくは桃子さんに伝えたくてたまらなくなるのだ。
引用:『ぼくは勉強ができない』(p.70)

勉強ができない高校生時田秀美は年上女性の桃子さんと付き合っている。すでにセックスも終えている。男子高校生としてはかなりの勝ち組である。同じクラスの女子にももてる。
「女にもてないという事実の前には、どんなごたいそうな台詞も色あせるように思う」と語ってしまうほどのもてっぷりである。なんだよこいつ、と思うのだが、季節の変わり目などを、年上の彼女(バーで働いている)に嬉々として伝えてしまう飾らない時田くん。なんだ、ただのイケメンか。
わたしは季節の変わり目がわかる男子が好きなのである。『ストロボエッジ』(咲坂伊緒)の蓮くん然り。

時田くんにはお父さんがいない。「だから、駄目なんだ」とレッテルをはられるのをひどく嫌う。そして、「先入観で物事を判断する」という大人の姿勢すべてに反発する。
それが1話ではかっこよく描かれていたのだが(小学生の委員長選挙のお話)、高校生活も終盤になると鬱陶しい思想のように感じられ(山野舞子さんのビンタ事件)、大人になるってそういう経験の積み重ねだよなあと思うのだった。
この本を高校生の頃に読んでいたら、きっと時田くんに夢中だっただろうし、それから色々なことがあるたびに、繰り返し読んだ小説だったのだろうなあと振り返ると、おとなしく高校生の頃に読んでおくべきだった。
きっとアルバイトで理不尽な客に遭った時とか、仕事ばっかりしててふと冷静になってしまった日の夜とか、「ああついにわたしは桃子さんにもなれず、時田くんのような男の子にも出会うわけがなかった」と知った日などに読んだのだろうなあ。

関係ないけれど、わたしは本書を読みながら、『坊ちゃん』を思い出した。
坊ちゃんの話自体は漠然としか覚えていないので類似点を挙げられないのだけど、「爽快感とイライラ感のミックス加減が坊ちゃんを読んでいる時に似ている、だがしかし時田秀美はイケメン」と思いつつ、夜中のキッチンに座り込んで読んだのだった。


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(文春文庫は解説が綿矢りささんです!それが目当てで読みました。)
 
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ランチのアッコちゃん / 柚木麻子 (双葉社)
お昼休みが苦手だった。小学生のときから社会人になるまでずうっと。ご飯を食べたい気分でないのに無理やり何かを食べさせられる給食。「眠いーやるきしなーい」と言っているだけの高校生の昼休み。私生活をまったく知らない人々と過ごすアルバイト先での昼休み。寝るのも読書も許されている気がしなくて、休んでいるのかなんなのかわからない時間が昼休みだった。そんな昼休みの経験しかないわたしにはランチは愉快な気がしなく、本書の「ランチのアッコちゃん」というタイトルのもつ女子力アピールのようなものが怖かった。でも、表紙のお弁当がおいしそうだった。負けた。

ランチタイムの女王アッコさんは、昼休みにも休まない。身体を鍛え、様々な場所に出没しては人脈を広げ、常日頃向上心を絶やさない。そんなアッコさんと契約社員女子がランチタイムを入れ替え、「新しい私」と出会う短編集。
このままずるずるとアッコさんの凄さだけが語られるお話だったら疲れるなあと思っていたら、3話で語り部ががらりと変わり、「ご飯」を通して人間が描かれるお話になった。とても面白い。のだけれど、アッコさん(というか東京ポトフ)の登場が遠すぎたり、唐突過ぎたりして、「アッコさんの活躍に期待しないで読む方が面白かったー」というのが正直な感想。
コギャル時代を懐かしんでいるアラサー女子と風紀に厳しい教師のやりとりが面白くて好きだった。つい先日、高校時代の恩師とお酒を飲み、まったく同じようなことを言われたのを思い出す。
4話めのゆとり世代の起業もおもしろい。このお話を読み終えてから、本書のカバーに書かれていた「ビタミン小説」の意味をなんとなく理解する。うまくいえないけれど、無謀なことにもがんがんチャレンジしてみたくなる気分だ。

ランチではないけれど、おうちで食べるご飯をもっとちゃんと味わいたいなと思ったのであった。おうちで食べるお昼ごはんほどそっけないものはない気がしてきて、改めたい気分。


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伊藤くんAtoE / 柚木麻子 (幻冬舎)
歳を増すごとに、友人知人の恋愛トークが重いものになりつつある。困る。なにもアドバイスできないので、ワイドショーを見るがごとく頷くに徹する。本当にそんなマンガみたいなやりとりがあるんですね、と羨ましくなったり、圏外の話でよかったと思ったりする。

本書の伊藤くんAの女性であったり、伊藤くんDの女性であったり、とにかく読んでいて、ちらほらと自分や友人知人の顔が浮かぶ。「うわあ、これ読んだらいけない小説だったかもしれない。伊藤くん、最後には改心してくれないかな。でないと救われない」と思ったんだけれども、伊藤くんは一環してだめなヤツであった。読み終えても、伊藤くんのだめっぷりに疲弊させられた。読者をも振り回す伊藤くん。全国の伊藤さん連呼してごめんなさい。
だめ男の美青年伊藤くんとそんな彼に振り回されてしまった女たちの連作短編小説である。
だめな男ほど女を欠かさない気がする。ひとりで生きていけないからだ。そして、女はだめな男を世話する自分が好きだったりする。欠点を見つけては、それを許す寛大な女である演技をし、自分をなぐさめているような気がしてならない。

わたしがすきなのは「伊藤くんC」のお話である。この子が唯一、伊藤くんにダメージを与えられたような気がするからだと思う。端的に言えば、伊藤くんを挟んだヤリマン(聡子)と処女(実希)の友情関係が面白かった。互いに互いが見下しあいはじめ、友情が決壊する。
彼氏ができた途端に人格が変わる女の子は多々いる。あれってなんなのだろう。趣味も服装も変わる。女として見られることを覚えるという感じなのだろうか。男の子でも恋人の有無でがらっと感じが変わるのだろうか。気になるところ。
「伊藤くんD」の主人公でもある実希の豹変ぶりにはひくものがある。伊藤に捨てられたくがないために処女を捨てようと必死になり、なりふりかまわず猛進する。「こういう子、いるいる」となってしまい、本作は心がどっと疲れる。「彼女らとは違う、わたしはこんな男には振り回されない」という優越感が自分にはあるのだなあと目の当たりにしてしまう。
 

結局、何も発さない人間がこの世界で一番強いのだ。


ここまで伊藤くんを見下して読んできた伊藤くんAtoDなのですが、最後のEの伊藤くんの主張で、わたしは嫌な予感が的中してしまった。「わたし、けっこう、伊藤くんの言うことが理解できてしまうよ?」
こまごまとした伊藤くんのあれこれは理解できなかったりするのだけれど、「傷つけられない生き方」に関しては、とても納得してしまった。
それを「死んでいる」と言われてしまったので、そんなにダメかなあとも思う。いちいち傷ついてたら心がもたないから、大一番以外は土俵にあがらない、という生き方は間違っているのかな。間違ってても、今から何もかも全力で!生きます!ってのもなんだか疲れるよなあと思うのであった。

とにかく読み終わってからどっと疲れる作品集で伊藤くん本当すごい。

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アイの物語 / 山本弘 (角川書店)
評価:
山本 弘
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伊坂幸太郎がエッセイ「3652」で、ロマンか何かのテーマで紹介していたお話。
SFは読めるが、意味がわかっていない上、ロボットモノは苦手と思っていたのに、読み出したら止まらず、途中でくじけそうだったけれどでもオチが気になる…と踏ん張って読んだ作品。
読書は登山とはこのようなことをいうのだな。


人類が衰退し、マシンが君臨する近未来で、マシンであるアイビスが、ヒトの僕に語る7つのフィクション。アイビスの真意とは一体何か?なぜ、マシンは地球を支配するのか。


SFの何が苦手かといえば、カタカナの難しい名称が苦手なのだ。
よって、短編1話めの「宇宙をぼくの手の上に」の序盤は辛かった。
このお話の面白かったところは、アイビスと僕がフィクションにこだわり続けるところ。
読書をしない人からすると、「嘘の話は読んでいて面白いのか」という見解になるらしい。それにうまく答えられず、悶々と読書してきたが、この作品は答えに近い。だがしかし、言語化してアウトプットできない。
ロールプレイでしか得られない何かがあって、自分では到底たどり着けない世界や感動がある。
各自の世界を少しずつ共有するのが物語で、各自の世界を許容しあえるのが物語だと思っている。


終わり方も綺麗で、これから僕が語っていく物語が気になるところである。
この本は手元においておいて、もう一度読み返したい。
今は、フィクションについてが気になったけれど、この先、べつの機会に読んだら、きっと何かまた違う発見があるに違いない。



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