書評・感想ブログ。
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鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様 / 朱川湊人 (集英社)
絵描きを夢見て、家出をした風波(PN)は、穂村江雪華という美青年に出会う。
彼と関わるようになってから、この世の者ではないものに遭遇するようになった。
「絵を描くこと」で、この世にしがみついている「みれいじゃ」を供養する2人の大正怪奇探偵譚!

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朱川湊人さんの文章は、とても読みやすい!!!です。

大正という時代を生きたことがないわたしでも、楽しく情景を描け、
するすると物語の中に入ってしまいました。
細部までしっかり構築されていて、
「あ、あれ?これ江戸川乱歩?」というような仕掛けがあったり、
当時の風俗を知ることもでき、物語以外の部分も楽しめます。

「みれいじゃ」と「絵描き」と「大正時代」のすべてがうまく噛みあっています。
「絵を描いて、霊を供養する 穂村江雪華」がものすごく美しい!
(現場を見たわけじゃないんですが。)

「大正の霊」って聞くと、どんなおどろおどろしいものがでてくるんだろう、とビビっていましたが、
どのお話も、切なくなるような、しっとりとしたお話が多かったです。
わたしは表題作の「鏡の偽乙女」が好きです。
下宿先に居座っている霊を鏡供養するために、風波が苦労して絵を書き上げるお話です。
風波のものすごい一般人なところ(でもプライドの高いところ)が好きです。

途中で登場する絵描きの惣多もものすごくいい味!

続編があるのなら、是非とも読みたいです。

(257p) 朱川湊人 直木賞 
道徳という名の少年 / 桜庭 一樹 (角川書店)
評価:
桜庭 一樹
角川書店(角川グループパブリッシング)

薔薇のかんばせをもった1,2,3,悠久という名の四姉妹。
悠久の不道徳な行為によって生まれた、「道徳(ジャングリン)」と名付けられた少年を中心とした、連作短編集です。

わーい!こんな桜庭一樹を待っていたよ!
ゴシックで排他的で、ほのかに官能的で、「わたしが好きな桜庭一樹」が読みやすく1冊にまとまってくれていて、有難い1冊でした。
禁忌な童話が納められた本!のような装丁で素敵です。

どろどろとしたお話が多かったので、よけいにかもしれませんが、
「ぼくの代わりに歌ってくれ」がわたしは1番好きでした。
誰宛にかわからないけれど、ラブレターを書き綴っている少年のお話です。
誰宛でもなく、異性を好きになったこともない男の子が書くラブレター。
どんなラブレターよりも純粋そうで、読んでみたいです。

「ジャングリン・パパの愛撫の手」は、エロスとホラーが盛り込まれていて面白かったです。
ジャングリンの幼少期の「ほしいものはあるかい?」の問いの少女の答えが怖かった!
「ま、まさか、こんな展開になるまい」とこちらが用意していた最悪のパターン以上の最悪な展開にもっていかれ、なかなかバッドな気持ちでした。

癖になる毒のような1冊でした。

(123p)


 
卵の緒 / 瀬尾 まいこ (新潮社)
第7回 坊ちゃん文学賞受賞作。

「わたしはどうやって生まれたの?」と聞くと、川から流れてきたとかキャベツ畑で拾ったとかコウノトリが運んできたと、母に曖昧な返答をされていた。そして、全然信じてないくせに「そっかあ」と幼少期に思っていたことを思い出した。 

ちょうど妊婦健診の待ち時間にこの本を読んでいて、わたしも将来、子どもに同じような質問をされるだろうけれど、なんて答えようかなあ……と考えてしまった。
育生のお母さんは「捨て子じゃないなら、へその緒見せて」という育生に、卵の殻を見せて「卵から産んだ」という。
いつか聞かれるであろうこの質問に、こうやって答えようと構えていた育生のお母さんの愛情、すごいなあ。

そして、育生のお母さんは素晴らしいことをたくさん育生に教えているのですが、1番いいなあと思ったのは、「美味しいものを食べた時」のお話。
すごく美味しいものを食べたら、食べさせたい人、一緒に食べたい人の顔が思い浮かぶ。それが、好きな人。
すごいなあ、いいなあ、と思っていた矢先、『サザエさん』のフネさんが、「わたしだけで美味しいものを食べるより、みんなで食べたい」と言っていて、「愛ってこういうものなんだろうなあ」と思いました。

いいお話だったんだけど、あまりにもお母さんが素敵な人物過ぎて、美しすぎるお話に感じてしまったのが残念です。こんなお母さんになれたらいいのに。


同じく収録されていた「7's blood」。
こちらは、二人で暮らすことになってしまった異母姉弟のお話。
このお話の中でも、「腐ったケーキを食す二人」の姿にジーンとしてしまった。


「食」っていつもそばにあるものだから、ついおざなりになってしまうんだけど、「食」を通してこんなにも人間関係がはぐくまれているんだなあと感じた2話でした。
少女には向かない職業 / 桜庭 一樹 (東京創元社)
いかにもラノベだったので、敬遠していたけれど、いざ読んでみたら、勢いで読んでしまいました。 

そりゃ、少女に殺人は向いていないだろうなあ……。
誰にも向いてない職業だと思うなあ、それは。

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家族に不満を持ち、友人との関係に気を遣って生活している大西葵、フツウの中学生。ストレス発散はゲームの世界。
だけれど、何かがズレ始め、アル中の義父を見殺しにしてしまう。
葵の魂を「殺人者」へ仕立て上げた風変わりなクラスメイトの宮乃下静香は、言った。
「次は、葵の番。殺したい人がいるの」
殺人なんてもうごめんだ。
人が死ぬなんてごめんだ、と思っていた葵は、静香を避け始めるが…。

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「少女ふたりの闘いの記録」です。
地位とかそういった武器は何も持っていないので、本当の凶器を武器にしてしまった少女ふたりの理不尽な境遇との闘い。
共感できる部分もできない部分もあったけれど、みんな内に秘めた凶暴な感情ってあると思う。だから、この2人を「異常」と突き放すことはできませんでした。

最後の方の、静香の「大西葵は、特別な女の子なんだよ」というセリフが好きです。
すっごく個性的なキャラクターに仕上げられていた静香のメッキがすべて剥がれてしまい、ただ教室の中心にいた葵に憧れていたのが露呈された場面です。。
突拍子もない個性的な人格を作り上げて、友だち…なんとなく憧れている同性の子の気をひく静香の気持ちが、すごくよく分かるのです。
わたしが内弁慶な女だから余計にわかるのかもしれません。
そうでもしないと、教室で孤立してしまった自分を正当化できない、自分が分からない。
でも、個性的な人格さえあれば、周りの平凡な子から一線ひける、と思い込んでいたのです。
徐々に、宮乃下静香がフツウの地味な子に戻っていく感じも面白かったです。


ドラマ化もしていたみたいで驚きました。
善人か悪人か分からない宮乃下浩一郎さんの役を要潤さんが演じているそうで、面白そうです。
空を見上げる古い歌を口ずさむ / 小路幸也 (講談社)
第29回メフィスト賞受賞作。

以前読んだ「空へ向かう花」のイメージとは全く違った作品でした。
あのときは「ちょっとウマイことを言う作家かな」と思っていたのですが、このお話は、ウマイことどころか、ノスタルジックホラーとでも言ってしまっていいような、なんとも言いがたい不安感が付き纏うお話でした。(表紙は荒井良二さんのかわいい絵なのに!)

人の顔が<のっぺらぼう>に見えてしまう息子を救いにきたはずの兄は、なぜか自分の昔話を語りはじめる。「この話は、のっぺらぼうの真相に繋がるのか?」
年の離れた兄が子ども時代住んでいた、パルプ町。
人の顔が<のっぺらぼう>にしか見えなくなった兄。
工場と社宅、必要最低限の店舗。隔離されたような町で起こる不可解な事件。
兄は、事件に関わる人物を目撃した。
しかし、人の顔が<のっぺらぼう>にしか見えなかったため、誰なのか全くわからない……。

というお話なのですが、この「誰かわからない」「知っている人かもしれない」という恐怖。
そして、兄の口から語られるパルプ町の姿がとてもリアルで、本当にあった事件のような気がしてきて恐ろしい。
小学生が生み出す噂って、妙にリアルで大事なところが抜け落ちていて、恐怖感を煽る気がします。「ノート」のくだりが怖かった……。

昭和の高度経済成長期あたりのノスタルジックホラーは、現代を舞台としたホラーよりもなんだか薄気味悪くって好きです。

(303p)