書評・感想ブログ。
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ささみみささめ / 長野まゆみ (筑摩書房)
 中学校の図書室の本の背表紙はどれもこれも日焼けしていて、「読みたい!」と思えるような状態ではなかった。
いつから書架にあるのか定かではない岩波新書、ネタが古過ぎる中学生日記、字が小さすぎて書体も古い全集。
推理小説はどれもこれも毒が染み込んでいそうだし、伝記は鞄にしのばせたら呪われそうだった。
 そんな中、書架で異彩を放っていたのが、長野まゆみさんの著作だった。日焼けしていない背表紙、綺麗な装丁。
本の内容など関係ない。読んでいる本が綺麗かそうでないか、が中学生だった頃の最重要事項だったのだ。
図書室にあった長野まゆみ作品はかなり読んだ。読んだが、内容はあまり覚えていない。文体が独特だったことと、中性的な少年が同性愛に落ちていく内容が多かったような……そうでないような……。

 そんなイメージで、本書「ささみみささめ」を手にしたので、懐かしいようなそうでないような不思議な気持ちであった。
少しぞくっとする短編25話ということで、すべて「少年愛を独特の文体で」描かれているのかと思ったら、まったく違うのだ。
物語を語るのは中年から年配の女性。どろどろとした昔年の記憶、嫉妬、諦観。はっとする展開、丁寧な情景描写。
25話もの短編が収録されているので、まとめて読むのも惜しいな、と思い、読書を始める前に1話。寝る前に1話とまとめて読まないようにして、1冊を堪能した。
中には、「スモモモモモモ」のように、中性的な少年のその後のようなお話も紛れており、「ああ、やっぱり長野さんか」とも思う。
うーん、でもだいぶイメージと違ったので、新しく好みの作家に出会ったような気がしてうれしい。
 なかでも気に入ったのは「きみは、もう若くない。」と「ここだけの話」。わたしは絵描きの話に弱い気がする。

(255p)
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円卓 / 西加奈子 (文藝春秋)
評価:
西 加奈子
文藝春秋

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「孤独」に憧れる小学三年生の琴子(こっこ)。
三つ子の姉に、祖父母、両親円卓を囲む生活をしている琴子は「孤独」を知らない。
ある日、クラスメイトが「眼帯」をしてやってきた。
「ものもらい」になったという。琴子の胸は高鳴る。「なんて、かっこいいんだろう!」
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表紙のように、クレヨンでがしがしと書かれた世界のお話でした。
読んでいて目がチカチカしそうなくらい濃い世界の中で、ほんわかと琴子が成長してお話がまとまったので不思議な読後感でした。

子どもの頃って、憧れるよね、眼帯。孤独。大人っぽい言い回し。
それを、琴子は、せっせとジャポニカ学習帳に書き付けていて、かわいい。
かわいいのに、なんか間違っている。これまた、かわいい。

琴子も充分に面白い子なのですが、琴子の周りにいる人物たちも面白いです。
吃音のぽっさん。(寿老人の熱烈なファン。)(なんで寿老人…!!!)
美人の三つ子。活字中毒の石太爺さん。そして、手芸部の部長!!
このお話の中でも、とにかく手芸部のあれこれでわたしは爆笑していました。
刺繍しているものがすごい。
さすが西さん。裏切らない。

お話は、琴子の周りの人物の紹介(家族からクラスメイトまで)を経て、琴子と「孤独」という核心へ向かってゆきます。
この、ぐるぐるまわって中心へ向かう感じが、まさに「円卓」。

濃すぎて、あっという間に読み終えてしまったのに、意外と色々なことが胸に残っていて、最後に思い出しながら、「こっことぽっさんはいつまでも仲良くいれますように」と願ってしまう。

「あいこがつづく時間」を想像してみたら、なんともいえない気分になって、読了。
やっぱり西加奈子さんて、なんとも言えないいい瞬間を知っているんだな。

(190p) 

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(Amazon)円卓 西加奈子 (文春文庫)

坊ちゃん / 夏目 漱石 (岩波書店)

なぜか実家の家族がこぞって読んでいた「坊ちゃん」。
示し合わせたわけではないそうですが、家族で楽しそうに「坊ちゃん」談義をしていて楽しそうだったので、わたしも輪に入りたくなりました。
実は、人生初・漱石です。

読み終わってから、ひとつ松山の住人に聞きたい。
こんなに坊ちゃんに馬鹿にされているのに、なぜ、「坊ちゃん土産」を作るのだ!!!

てっきり、情に篤い坊ちゃんという人物が松山で教師として奮闘する話かと思っていたのです。
しかし、坊ちゃんは江戸っ子も江戸っ子、人にあまり嬉しくないあだ名をつけ、心の中で罵倒し、馬鹿にされれば「てやんでい」と感情に任せて怒り出す。(そのくせ、大勢の前で喋るのは苦手、らしい)
どうも人間として好きになれない教頭の「赤シャツ」に敵意をむき出しにし、「こんな松山みてえな田舎、いつでも出て行ってやる」と息巻き、プライドなのか正義感なのか曖昧なものを武器に教師生活に立ち向かう というお話。

社会人になる前となった後では、感じ方が全く違うかもしれないお話です。

序盤では、ばあやの清をさんざん馬鹿にしていた坊ちゃんですが、松山にひとりで旅立つと、清が恋しくなったようで、手紙を書く姿はかわいいな、と思ったのですが、
赤シャツや野だとの「社会人の大人の駆け引き」はどうやら性に合わなかったご様子。
蕎麦屋に出入りするなといったのはお前なのに、なぜ芸者遊びをしている、と立腹し、上司を殴って、教師を辞任し、清の待つ江戸へ帰る……。
そして帰る際に「不浄な地」とまで言われているのに、「坊ちゃん」で有名な松山……。
松山の方たちは、坊ちゃんを読んでいるのだろうか。
わたしが松山に住んでいたら、「坊ちゃんの野郎め、わたしの住む町を馬鹿にしやがって」と怒りそうなもんなんだが。(坊ちゃん自身だって、絶対に怒るだろう、江戸を馬鹿にされたら。)

社会に出ると、自分の思う正義だけでは到底生きていけません。
それが、俗に言う「社会にもまれる」ということだと思うのですが、坊ちゃんはもまれない。
戦ってしまう。
これは小説だから、上司を一発殴って、仕事を辞めてやってそれで終わりですが、現実はそんなに甘くない。坊ちゃんは、いつか「自分も少しは間違っていた」ことに気がつくだろうか。

清が食べたがっていた、越後の笹飴というものがどんなものか気になります。
大人になっても少年な坊ちゃんですが、清という人物のありがたみに気がついただけでも前進…かなあ。自分に優しい人にだけ、優しい男という感も否めないが……。

(205p)

いやいやえん / 中川 李枝子 (福音館書店)
小さい頃…5歳か6歳ころに、何度も何度も借りて読んでいた本です。
借りていたわりに、内容をまったく覚えていませんでした。
表題作の「いやいやえん」だけを読んでいたみたいです。

赤い車がいや。
おべんとうがいや。
お姉ちゃんのおさがりがいや。
ようちえんもいや。
しげるには「いや」なものがたくさんあります。
いやだいやだと暴れるしげるに、先生は言いました。
「そんなにいやなら、いやいやえんへ行ってみてはどうですか?」
いやいやえん。
いやなものがなくなったようちえん。いやなことはしなくていいようちえん。
さて、しげるは…?

「いやいやえん」すごいですね。
想像したら、地獄絵図でした。
中学生の頃、スカートの長さなどの校則が厳しかったことを思い出しました。
先生が一言、「そんなにいやなら、やらなくてよろしい」と言っていたら、
「いやいやえん」が誕生していたのです。
「自由になってしまう恐怖」って、日本人特有のものなのでしょうか。

やまのこぐさんが、ようちえんに遊びに来るお話も好きです。

この真っ赤な(しげるが嫌いな赤!)装丁が何十年経っても忘れられません。
小さい頃に読んだ本って、内容なんか全く覚えていなくても、
「読んだ」っていうことだけは、しっかりと記憶されていて、驚きます。

(177p)

JUGEMテーマ:児童文学
 
しずく / 西加奈子 (光文社)
評価:
西 加奈子
光文社

女子校出身のわたしには、驚くほど女友達しかいません。
女としか飲んだことがなかったし、
女としか旅行にでかけたことがないし、
女と買いものにいくし、女と喋ってはゲラゲラと笑います。

そんなものなので、女同士の短編集というこの本のことも「日常」と思って手にしたのですが、ちょっと違いました。
幼馴染、親子、猫、旅行先で、大家と住人、恋人の子ども。
世の中にはたくさんの人間関係があり、たくさんの女同士があるものです。

なかでも気に入ったのは「ランドセル」と「しずく」です。
小学生時代の幼馴染との再会と勢いで旅行に出てしまった二人。
お話の最初が小学生の作文で始まるのですが、西さんだ!と一人で大喜び。
西さんが書く小学生が、給食くさそうでかわいい。

「しずく」は猫のメス同士が描かれています。
同棲をはじめたシゲルとエミコにくっついてやってきた、フクさんとサチさん。
ケンカをしながら、二匹仲良く生活をしています。
「のおおおおおおおおお。」
「だふうううううううう。」
なんてかわいい猫たちなんだ!西さんが書く動物も好きです。

ミッキーギャグはどうもツボが「うんこ」らしいのですが、
「うんこ」で笑える西さんが、もう小学生の男のこのようでいとおしいです。

女同士も男同士も、同性同士の仲って、言い切れぬ神秘さがあります。
同族嫌悪したり、ものすごく共感しあえたり。
これからも大切にし合えたら素敵だなあ。

のおおおおおお。だふううううう。

(210p)
JUGEMテーマ:読書