書評・感想ブログ。
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十二人の死にたい子どもたち / 冲方丁 (文藝春秋)

 

廃病院に集まった自殺志願者の十二人の子どもたち。しかし、病院のベッドには十三人目の死体があった。

 

このあらすじを読んで、たぶん20年前だったら(バトルロワイヤルとか大好きだったので)飛びついて読んだのだろうなと思い、自分の感性の老いを感じたものの、やっぱり無視できずに読みました。読み終えて、ただただ「綺麗な本だなあ」ということです。

 

(以外、ネタバレあります)

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残り全部バケーション / 伊坂幸太郎 (集英社)

「問題」児がいるのであれば、「答え」児もいるのではないか、


わたしの読書熱の再スタートは伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」だった。よって、伊坂作品には並々ならぬ期待があり、読み始める前に少しだけ特別な気持ちになったりもする。
そんなわけで、一ファンとしては、「いつも通りの伊坂幸太郎の著作」を読みたいと思う反面、「新しい伊坂幸太郎の一面も読んでみたい」とも思う。でも、いつもと違いすぎても困る。そんなわけで、いつも新しい本を手にするときは緊張する。どっちだ?

本書は、裏家業から足を洗いたい若者岡田と裏家業のベテラン溝口の連作短編である。
見知らぬ家族とドライブをしたり、タイムスリップを演じたり、検問にひっかかったりする。時代も語り部もバラバラだけれど、伏線が回収され、物語がすっとひとつにまとまるお馴染みの伊坂作品だった。

なんだかいいなあと思っていたのは、「ゴルゴ13」で語られる時系列だ。
ある話では、溝口が岡田に、ゴルゴ13を全巻読んでみたいなあと漏らし、ある話では全巻読破したことを自慢する。物語では語られない部分で溝口が生活していることが伝わってくる。ゴルゴ13の全巻読破。おっさんらしい。
若者とおっさんのコンビというのはずるいよなあ。


(楽天ブックス)残り全部バケーション [ 伊坂幸太郎 ]
(Kindle)残り全部バケーション (集英社文芸単行本)
(amazon)残り全部バケーション
ぼくが愛したゴウスト / 打海文三 (中央公論新社)
(ネタバレします。)



「これはおもしろい!」と思った小説や物語に出会ったとき、人はどうするんだろう。
わたしは眠れなくなった。数日間、物語に思いを巡らせた。その全てを言葉にしてブログやノートに書き留めておこうと思っていたのに、ついうっかり忙しくて忘れてしまった。とても勿体無い気持ちでいっぱいだ。


11歳のぼく(翔太)がひょんなことからパラレルワールドへトリップしてしまい、同じくトリップをした青年と自己について、存在について討論を交わして物語は進む。
自分と全く同じ形をした人間で記憶も生活形態もなにもかもが同じであるのに、尻尾が生えているという部分でだけ異なったパラレルワールド。尻尾は裸にならないと確認できない。
よく考えると、現実にありそうで怖いのだ。
もしかしたら、同じように皆には尻尾が生えているかもしれないし、わたしだけ血が赤いのかもしれない。確認したくても、そう簡単には確認できない。自分中心に考えてしまうのは人間当たり前のことだけれど、「自分だけが違う」というのは文字で見る以上に恐ろしい。
序盤の逃走劇にハラハラし、流れるように読み進めてしまう。


中でも、今日まで一緒だった家族が「尻尾の有無」によって、見た目がまったく同じでもやはり「違う人間」と翔太のことを切り離してしまうシーンがいちばん恐ろしく、そして悲しかった。
本当の母にそっくりなもう1人の母と翔太のやり取りはとても心が苦しかった。愛せないわけがないと思う。だけど、愛しすぎているからこそ、愛せないのだろう。キャッチボールのシーンが印象的で、でもすぐに壊れてしまうであろう関係が目に見えてさらに切なくなった。


作者は意地悪で、「こうならないといいな」と思っている方にどんどん話が流れていってしまうので、ページを繰る手が止まらない。
終盤、「ぼくがの脳が見ている幻影」とこれまでのすべてを翔太は受け入れるが、なにも結論されないまま、11歳のぼくの脳が見るとは思えない情景の描写で話が終わる。
「幻影」と否定されたあぐりはどんな気持ちで翔太とセックスをするのか。幻影でないと伝えたい思いでいっぱいなんじゃないだろうか。それはやはり愛なんじゃないだろうか。
それなのに、タイトルは「ぼくが愛したゴウスト」である。なんだかやりきれない。


哲学には詳しくないけれど、こういうお話を読むと、倫理の時間に学んだデカルトの思想を思い出す。
自分がななめ上から自分を見下ろしているような感覚で生きていることが、翔太の言う「脳が見ている幻影」であるとするなら、今生きているわたしも幻影である。
そうであっても、そうでなくても、感情は言葉で出力される。
言葉で何かが表現されているうちは、そこに存在できているのではないか、と思って少しだけ安心するので、わたしは記録魔なのかもしれない。


伊坂幸太郎が「3652」でやたら紹介していたので読んでみたが、読んでよかった。


(264p)





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完全なる首長竜の日 / 乾緑郎 (宝島社)
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少女漫画家の姉と自殺未遂をしてから植物状態になってしまった弟。
ふたりは、最新医療技術のSCコーマワークという手段で、会話をし、弟の自殺未遂のきっかけを探る姉。
しかし、まるで現実世界でしゃべっているような錯覚を覚えるセンシングは、しだいに姉の生活を脅かしはじめる。
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簡単によめるミステリを探して書架をうろついていた時に出会った本です。
(本当は、乾くるみさんの新刊を探していた。)

「完全なる首長竜の日」っていうタイトルは、ちょっとファンタジーなのに、帯に書かれている文句が現実的で、どういう世界観なのだ、と気になってしまい読み始めました。

どこからどこまでがセンシング中なのか、が次第に曖昧になっていくので、「これはもう勢いで読むしかない」と思い、2日くらいで読了。
だから、だいぶ難しい単語や説明は読み飛ばしたのですが、それでも、それなりに謎解きには参加できたし、ちょっとドキッとして肝も冷やしたし、オチには「ええええ」って驚けたし、満足です。

そして、ものすごく読みやすい。

下降気味の少女漫画家・アラフォーの姉の描写が、リアリティにあふれていました。
読んでいて、なんの違和感もなくて(漫画家の方が読めばリアルでもなんでもないと思いますが)よけいに、センシング中なのか現実なのかがごちゃごちゃしてきて、そのごちゃごちゃ感がとても面白いです。

オチは「やっぱりなー」っていうところにきちんと落として、読者も安心。
だけど、最後の1行で「えええええ????」ってなって終了。
この放り投げ方が大好きです。

このミス!の大賞ということで、納得。
いや、はじめてこのミス!受賞作読んだかも…?

(305p) 
配達あかずきん / 大崎梢 (東京創元社)
フリーターだった頃、ほんの数ヶ月だけ書店でアルバイトをしていました。
書店のお仕事って、「本を売る」「本を陳列する」くらいで、いっしょに働くのは「本が大好き!」という人ばっかりだと思って始めたのですが、まったく違いました。

書店のお仕事は、本を売るのではなくて、「お客さんが探している本を探す」こと。

最近の日本文学しか読んでこなかったわたしにとって、それはものすごい驚きでした。
日本文学って書店の棚にしてみたら、ほんのちょっとのスペースでしかないんです。
土木、建築、ビジネス書、看護に参考書……
そのどれもに、精通していなければならない書店員。
シーズンがくれば、1日中、図書カードの包装をしたり、と思っていたのとは違う世界でした。

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「配達あかずきん」は、書店・威風堂を舞台にした短編ミステリです。
寝たきりの老人が探してる本は何?
母が失踪したきっかけになった少女漫画とは一体?
配達されたばかりの雑誌にはさまれた盗撮写真とは!?
などなど、書店ならではの書店の謎がてんこもり!です。

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わたしは2話目の「標野にて君が袖振る」が好きでした。
「あさきゆめみし」という少女漫画を読んでから失踪してしまった母の行方を追う、というものです。
読後感がなんとも!!!!
ミステリの短編小説の読後とは思えない、清々しさを味わってしまいました。

この本の面白いところは、書店が舞台なので、本のタイトルが登場するところ。
読みつがれてきた日本文学!が名を連ねるのではなくて、
「あさきゆめみし」もそうだし、「葉桜の季節に君を想うということ」などわりと最近の本のタイトルがでてくるので面白いのです。

書店の謎は書店が解かなきゃ!

このシリーズは続編があるそうなので楽しみです。

(238p)